口腔崩壊:貧困で子供の歯を治療せず という記事について

口腔崩壊:貧困で子供の歯を治療せず 医師「実態調査を」(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20100321k0000e040022000c.html
虫歯のリスクとして、「社会経済的因子」の関与が大きいという説があります。
それにしても、いろいろなことを考えさせられた記事です。
まずは記事の文章にいくつかツッコミ入れてみます。
『治療した歯が虫歯になっていることも』
虫歯の穴を詰めたら、虫歯は完治!というのはそもそも間違いなのです。実は。
歯のまわりの環境は何も変わっていないわけですから。
ましてや、途中で来院をやめてしまっている子供。
治療した歯が虫歯になるのはあまり不思議ではありません。
『親が口腔崩壊しているケースも多い』
やはり、親の虫歯菌が子に感染したのだなあ、と。
虫歯菌は親から子へ、1歳半から2歳半頃に最もよくうつると言われています。
親が口腔崩壊していれば虫歯菌が多い → 子供にうつる → 子供も虫歯が多い
というのは、自然な話。逆に、
親は虫歯が一本もない。虫歯菌がない/少ない。 → 子供にも虫歯菌がない/少ない → 子供も虫歯がない
となるはずでは。
『総務省の家計調査(07年度)では、年収5段階の最も低い層の歯科診療代は、最も高い層の約5分の1』
診療へ行く機会も関係していると思いますが、かぶせやつめもので白い自費のもの、数万円以上するものを入れる傾向があるから、というのも理由ではないでしょうか。詳しい資料を見ないとわかりませんが。
◆子供の口腔崩壊、どうするべきか
この記事を読んで、私が思い出したのはスウェーデンでのこと。
スウェーデンで予防歯科の父と言われるアクセルソン教授に、歯科の現場を案内していただいたことがありました。
そのうちのひとつが、アクセルソン教授が予防歯科のプログラムを成功させた、スウェーデンのヴァルムランド州の小学校。常設の予防歯科診療室がありました。予防歯科を担当するDental Nurse が常駐し、在校生たちに虫歯予防教育、メインテナンスを日々行っているとのことでした。もちろん無料です。
虫歯予防教育といっても、ただ歯を磨きましょう、フッ素を塗りましょう、なんてものではありません。虫歯はどのようにできるのか、どうすると虫歯になるのか、細菌、唾液、食事についての知識をきっちり学ぶのです。
小学生のうちに虫歯リスクを下げること、そして何より虫歯の病因を理解していることは、後の虫歯治療を減らすことにつながります。歯科医療費を減らすことにも貢献するでしょう。
そういう大きな見方で国としての虫歯予防への取り組みが進むといいですね。