「歯周病:幹細胞で歯ぐき再生」というニュースについて(まとめ)

骨髄液から幹細胞を採取、培養後に患部へ移植し、歯ぐきを再生させることに成功した、というニュース。よほどセンセーショナルだったのでしょうか。報道ステーションでも取り上げられました。
歯茎 幹細胞で再生・・・広島大(読売新聞)
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=22312
歯周病回復、幹細胞が有効(中国新聞)
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201003190054.html
歯周病:幹細胞で歯ぐき再生、広島大がヒトで成功 患者3700万人に希望(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/science/news/20100318ddm001040002000c.html
詳しい研究内容は論文が出ないとわかりませんが、正直、う〜ん、と思うことが多いです。
◆細菌感染を減じる治療を併用しなければ意味がない
歯周病は細菌感染によって起こる病気ですから、まずは細菌を減じる治療をしなければ、いくら組織を増やしたところでまたすぐに再発してしまうでしょう。
ですから、歯周病の新しい治療法、というのは違うかなあと。組織を回復するのには役立つでしょうけど。
◆時間、痛みを含めたコストをかけて、この治療をしたいか
骨髄採取は痛みもあり、たいへんなことです。
http://mineko.cool.ne.jp/inoti/MB6.html
研究とはいえ、軽度の歯周病の人がよく承諾したものだなあ、と。
重度の歯周病だったとしても、これだけのことをして治療をしたい人が本当にいるのだろうか、と。
◆ここまでの治療が必要な人はそんなに多くない
歯周病患者3700万人に朗報、といった論調ですが、この治療法が必要な人はごくごく一部だと思います。
重度でなければ、歯石除去とセルフケアを併用して治療ができます。
◆そもそも、予防、早期発見・早期治療ができていないことが問題
歯周病は早期発見・早期治療すれば、痛みも少なく治ります。
実際には感染源になる歯石や歯垢を減らすことをしていきます。これを歯周病になる前に定期的にすれば、予防になるわけです。
歯周病は治療法がない、というよりむしろ、歯周病が重度になるまで放置されてしまう状況の方が問題なのです。
歯周病は重度になるまで自覚症状が出にくい病気です。歯と歯茎の間、見えないところで進行しているので、軽度の場合は歯周病検査をしなければわかりません。
歯周病検査をしていない、歯周病検査をしたが結果を説明しない、歯周病検査をしてもまともな歯周病治療をしていない、そんな歯科医院を減らすことの方がよっぽど意味があるのではないでしょうか。